「情報銀行と金融」の可能性について経済アナリスト馬渕磨理子が解説いたしました。
動画でもご紹介いただきましてありがとうございます。
金融機関初「情報銀行」本格運用 三菱UFJ信託銀行 (fnn.jp)
◆情報銀行とは
システムを活用して個人のデータを管理し、ほかの事業者に提供できる仕組みです。
個人データには、行動履歴、購買履歴、金融、ヘルスケアデータなどの重要なデータが含まれます。銀行という信用度の高い組織に「資産」を預けるように、個人は自らの「パーソナルデータ」を情報銀行に預託し、管理するのです。生活者は情報銀行にデータを提供することで、メリットが還元されます。銀行が個人から預かったお金に対して利息が支払われる構図に似ています。
◆懸念点→日本独自の倫理観が強み
日本人は、日本の企業が連携してパーソナルデータを扱うと聞くだけで、どこか“予期不安”を持ち、抵抗感を持つ人もまだ多いです。しかし、様々な場所に散らばっているデータを統合・流通させることによって、消費者の生活や企業のビジネスに大きなベネフィットをもたらす可能性があります。これまで個人のデータは一旦企業側に渡ってしまうと、自分のデータであるにも関わらず利用することができませんでした。これからは自身の個人データにアクセスできるだけでなく、その持ち出しや移転も可能になり、自身の個人データをコントロールできるようになります。プライバシーをしっかりと守りながら、情報銀行は“人生のコンシェルジュ”として寄り添うことができる。パーソナルデータを預けることで、ユーザーが自分自身でも気づいていない可能性について提案することまでもできるようになります。
◆金融とのタッグ
金融機関とのタッグでの強みは、まさに「銀行口座や証券口座にある資産情報」を取得できる点です。多くの個人データが集まる金融機関には、決済のプロセスを手掛けることから、マーケティングに有益な情報が大量に蓄積されています。情報銀行を運用するには、まさに適格。資産に応じて、趣味や嗜好、消費行動は異なります。ある意味、ひとりひとりの人生に寄り添った提案ができます。
◆日本の情報銀行、世界進出も
情報銀行は世界市場を意識して作られたビジネスモデルだとも言え、海外進出もあり得ます。個人情報の取り扱いについては、法的な決まりだけでなく、日本人には独特の倫理観を持っており、パーソナルデータを扱う点においても、日本ならではのルール作りを行っていくべきです。これによって、個人情報の利活用において、日本方式がグローバルスタンダードになる可能性を秘めています。
いまは、データを使っていかに効率化するかに焦点があたっていますが、効率的になった後の社会のほうが重要。効率化によって生まれた時間に対して、ユーザーが幸せになれるのかまで考えていくことです。
金融における“銀行”はお金という力で産業を育成することに寄与してきました。これからの時代、情報産業や日本企業が国際競争力を持つために、“情報銀行”がその中の通り“銀行的”な役割を果たすと考えられています。